翻訳をする理由

翻訳をすることは自分の文章力を鍛える最善の手段の一つである。また、翻訳が出ないと注目されないという日本の現状を考えると、研究者が翻訳をすることは義務の一つだと思われる。また、自分の研究分野に関係のある重要な文献の翻訳が誤訳だらけだと日本の研究が遅れてしまうので、正確に訳せる者が訳す義務もあるだろう。

オリジナルな研究をする時間が少なくなるというのは確かだが、そういうことを言う人の一部は、実際にはそれほどオリジナルな研究をしておらず、適当な語学力で海外論文の誤った理解に基づく論文を書いていたりする。古典を学ぶ場合と同じで、正確に全訳をするときぐらいの厳格さでテキストと向き合わないと、緩い思考しかできなくなる。

とはいえ、バランスが大事であり、ショーペンハウアーが読書について述べているように、他人の思考をレコードの溝のように頭に刻むことばかりしていると創造力がなくなってしまうかもしれないので、注意が必要であろう。